「家事」という終わりなき仕事:『対岸の家事』が描く現代の女性たち
専業主婦って、時代遅れなの?家事や育児に専念することに価値はないの?
そんな疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
TBSの新ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』は、
まさにこの問題に真正面から向き合います。多部未華子さん演じる
主人公・詩穂を通して、現代社会における「家事労働」の価値と、
それに携わる女性たちの葛藤を鮮やかに描き出しています。
本記事では、このドラマが投げかける問題と、視聴者の心を揺さぶる理由を探ります。
専業主婦、ワーキングマザー、そして家事に関わるすべての人々に、
新たな視点と気づきをもたらす『対岸の家事』の魅力をお伝えします。
原作の概要
ドラマ『対岸の家事』の原作は、朱野帰子(あけの かえるこ)さんによる小説『対岸の家事』です。
この作品は2018年8月に講談社から単行本として刊行され、
2021年6月に講談社文庫として文庫化されました
『対岸の家事』は、専業主婦として家事を「仕事」として選んだ主人公・詩穂が、
日々の生活や人間関係を通じて自身の選択に向き合う物語です。
詩穂は娘と二人だけで過ごす繰り返される毎日に孤独や葛藤を感じながらも、
周囲にいる様々な立場で「家事」に悩む人々と交流することで、自分にできることを考え始めます。
物語では、専業主婦、ワーキングマザー、育休中の父親など、多様な立場から「家事」という終わりなき仕事に向き合う人々が描かれています。
彼らの苦悩や限界に寄り添いながら、詩穂は自分自身の生き方を模索していきます。
著者について
朱野帰子さんは1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、
会社勤務を経て2009年に小説家デビューしました。
代表作にはドラマ化された『わたし、定時で帰ります。』や『駅物語』などがあります
専業主婦の現実:詩穂が抱える孤独と葛藤
「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」の主人公、村上詩穂(多部未華子さん)は、
過去のある出来事をきっかけに専業主婦の道を選びました。
彼女は夫・虎朗(一ノ瀬ワタルさん)と娘・苺(永井花奈ちゃん)と暮らしていますが、
働くママが主流となった現代社会では、専業主婦としての孤独感を感じています。
詩穂は日々、娘と2人きりで過ごす長い昼間を送り、時には寂しさを感じることもあります・・・
ドラマの中で詩穂の専業主婦を選んだ過去のある出来事とは?
自身のお母さんと何かがあった場面がでてきましたが、
これからいろいろわかってくると思います。
「時流に乗り遅れた絶滅危惧種」?
詩穂は、子育て支援センターの「手遊び教室」で働くママ・長野礼子(江口のりこさん)
と出会います。
礼子は育児と仕事の両立に限界ギリギリで、詩穂が専業主婦だと知ると
「時流に乗り遅れた絶滅危惧種」と揶揄します。
しかしその後、礼子が詩穂のマンションの隣に引っ越してきたことで、
気まずいながらも交流が始まります。
対岸にいる人々との交流がもたらす詩穂の変化
詩穂は、礼子との交流を通じて、家事という終わりなき仕事の意味を再認識します。
彼女は「対岸にいる人たち」との出会いを通じて、自分自身の選択を再確認し、
生き方を見つめ直す機会を得ます。
このドラマは、現代の女性たちが直面する選択と悩みを描きながら、
互いに支え合う重要性を伝えています。
家事という「見えない労働」の社会的価値
「対岸の家事」は、専業主婦として家事や育児に専念する詩穂の日常を通じて、
「家事労働」という「見えない労働」の社会的価値を問い直しています。
家事労働は、使用価値(生活における有用性)はあるものの、
交換価値を生じない無償労働として長く見過ごされてきました。
このドラマでは、詩穂が家事や育児を通じて孤独感や葛藤を抱える様子が描かれています。
専業主婦としての彼女は、直接的な社会的評価や報酬を得られず、
時には「社会に貢献していない」と感じることもあります。
しかし、家事労働は家庭や社会全体を支える重要な役割を果たしており、
その価値を再評価する必要性が指摘されています。
ドラマは、詩穂が周囲の人々との交流を通じて、家事労働の重要性を再認識し、
自分自身の選択を肯定するプロセスを描いています。
これにより、視聴者に「家事労働」が単なる「見えない労働」ではなく
、社会的に重要な役割を果たしていることを強調しています。
視聴者からの口コミ
- ある視聴者は、ドラマを「いいドラマじゃん!」と評価し、
「何度も泣きそうになった」と感想を述べています。 - 別の視聴者は、主演の一ノ瀬ワタルさんについて言及し、
「変な役で可哀想」と感じつつも、「今後、どうか素敵な役に恵まれますように」
と期待を寄せています。 - ドラマの内容について、「専業主婦とワーママワンオペ主婦、それぞれの立場」
が描かれていると指摘する声もありました。 - 原作者の朱野帰子さんは、ドラマの第一回のクライマックスについて、
「家事という仕事をしている人たちがいきついた逃げ場がない真っ暗な場所のシーン」
が印象的だったと述べています
まとめ
このドラマは、家事労働の経済的価値(年間約200万円から1000万円以上)を示しながら、
その社会的意義を問い直しています。
また、専業主婦、ワーキングマザー、そして家事に関わるすべての人々に
新たな視点と気づきをもたらし、多様な生き方や価値観を認め合う社会の重要性を訴えかけています。
『対岸の家事』は、現代の家族観や社会情勢の変化を反映しつつ、
「家事」という終わりなき仕事に携わる人々の姿を通して、
私たちに家事労働の価値を再考する機会を与えてくれる作品といえるでしょう。